マルコフの不等式 (Markov's inequality)
正の値を取る確率変数
が成立する。これをMarkovの不等式という。これを示す。
まず
横軸が
ここで1個だけ「うん?」ってなるのが2行目から3行目の左辺ですね。これは定義に従って計算すればよいです。
です。単純な場合分けです。具体的な積分とか総和とか確率変数が連続だとか考えなくても通用しますね。以上で完全にMarkovの不等式が示せました。極めて初等的な操作だけしかやっていませんね。
チェビシェフの不等式(Chebyshev's inequality)
同じように、
やることは全く同じです。まずは
同じですね。青が左辺で赤が右辺を
以上でChebyshevの不等式が示せました。両者は名前は違うけどほとんど同じものだということがわかりました。これなら他の不等式をもとにして確率と期待値に関する不等式が作れそうと思うでしょう。実際できます。
チェビシェフの一般化
チェビシェフの不等式で「2乗」としていたところを
がさっきと同じ設定で成立する。ただし
右辺は確率変数
Chernoff型の不等式
右辺を具体的に計算するにあたって、両辺の対数を取った次の形式が用いられることがあります。
チェビシェフ一般化とChernoffの関係
前述のChebyshevの不等式を一般化した多項式モーメントの式と、Chernoff型の不等式は左辺が同じものです。おっと、Chebyshevの方には絶対値がついているのでここでは
話を戻すと、左辺が同じ不等式ならどっちかが有効でどっちかが冗長なはずです。つまりどっちが等号成立により近いか、あるいはtightであるかsharpであるかなどといったりします。なのでここではChernoff型とChebyshevの不等式を一般化した多項式モーメントの不等式の、どちらが有効なのかを見てみましょう。結論からいうと
でもChernoffの方が右辺が計算しやすいとか何とかで応用所よく使われるそうです。
つづき
余談
ここまで読んでなんでChebyshevとかチェビシェフとか統一しやんねんと思った人挙手。
参考文献
Martin J. Wainwright, High-Dimensional Statistics, A Non-Asymptotic Viewpoint, 2019, Cambridge University Press, pp. 21-22, https://doi.org/10.1017/9781108627771.