とある数学の問題と解答のメモ521

/ Math Exercise

問題

(1) \(n\times m\)の行列\(M\)の階数が\(m\)であることと、\(|M^TM|\neq 0\)が等価であることを示せ。

(2) ブロック行列

\[ \begin{bmatrix}A&B\\O&C\end{bmatrix}\]

の逆行列を求めよ。ただし\(A,B,C\)はそれぞれ\(n\times n, n\times m, m\times m\)\(|A|\neq 0,|C|\neq 0\)である。

(3) 行列

\[ \begin{bmatrix}-5&1&4&1&1\\ 1&2&5&1&0\\ -2&0&5&0&1\\ 3&3&9&2&0\\ 0&0&-1&1&1\end{bmatrix}\]

の固有ベクトルの1つが\([1\ 2\ a\ b\ 5]^T\)であるという。\(a,b\)の値を求めよ。

(4) 行列\(I+\sum_{k=1}^\infty A^k/k!\)が正則であることを証明せよ。\(A\)\(n\times n\)行列で\(I\)は単位行列。

(5) ベクトル\(x,y\)に対して\(x^Ty\)によって内積が定義された4次元実数ベクトル空間を考える。このとき、2次元部分空間\(W\)の基底\(w_1,w_2\)と4次元空間の元\(x\)を以下のように与える。

\[ w_1=\begin{bmatrix}1\\1\\0\\0\end{bmatrix},\ w_2=\begin{bmatrix}1\\0\\1\\0\end{bmatrix},\ x=\begin{bmatrix}1\\1\\1\\1\end{bmatrix}\]

(5-1) \(w_1\)が張る1次元部分空間を\(L\)とする。\(x\)\(L\)へ正射影して得られるベクトルを求めよ。また、得られたベクトルと\(x\)の成す角\(\theta\)を求めよ。

(5-2) 4次元ベクトル\(u\)\(W\)への正射影を、射影行列\(P\)を用いて

\[ y=Pu\]

と表現する。行列\(P\)を求めよ。また\(u=x\)のときの\(y\)を求めよ。

(5-3) \(W\)の直交補空間を\(W^{\perp}\)として、4次元ベクトル\(v\)\(W^{\perp}\)への正射影を射影行列\(Q\)を用いて

\[ z=Qv\]

と表現する。行列\(Q\)を求めよ。また\(v=x\)のときの\(z\)を求めよ。

解答

(1) まず\(|M^TM|=0\)と仮定する。このとき、ある\(x\neq 0\)が存在して

\[ M^TMx=0\ \Rightarrow\ x^TM^TMx=0\ \Rightarrow\ \|Mx\|=0\\ \Rightarrow Mx=0\]

最後の式、これは\(M\)の列ベクトルを\(M=(y_1,y_2,\dots,y_m)\)として\(x\)の成分を\(x_1,x_2,\dots,x_m\)としたとき、

\[ x_1y_1+x_2y_2+\dots+x_my_m=0\]

を表していて(太字にしていないけど\(y_i\)が列ベクトルで\(x_i\)がスカラであることに注意)、\(M\)の列ベクトルが線形従属であることを示している。よって\(\text{rank}\ M\lt m\)。よって\(\text{rank}\ M=m\)なら\(|M^TM|\neq 0\)

次に逆を示すが、これはそのまま逆辿りすれば示せる。すなわち、まず\(\text{rank}\ M\lt m\)と仮定する。このとき、ある\(x\neq 0\)が存在して

\[ Mx=0\ \Rightarrow\ \|Mx\|=x^TM^TMx=0\quad(x\neq 0)\]

最後が成立するためには行列\(M^TM\)が固有値0を持っていなければ起こりえない。\(\lambda=0\)に対して\(|\lambda I-M^TM|=0\)を満たしているので\(|M^TM|=0\)。よって\(|M^TM|\neq 0\)なら\(\text{rank}\ M=m\)が示せた。

(2) 上三角行列の逆行列がまた上三角行列になることの類推から、上三角ブロック行列の逆行列もまた上三角ブロック行列になると予想して

\[ \begin{bmatrix}A&B\\O&C\end{bmatrix} \begin{bmatrix}X&Y\\O&Z\end{bmatrix}=\begin{bmatrix}I&O\\O&I\end{bmatrix}\]

とおく。それぞれの要素を計算して両辺で比較すると、\(X=A^{-1}\)\(Z=C^{-1}\)\(Y=-A^{-1}BC^{-1}\)とわかり、実際計算してみると逆行列になっていることがわかる。

\[ \begin{bmatrix}A&B\\O&C\end{bmatrix}^{-1}= \begin{bmatrix}A^{-1}&-A^{-1}BC^{-1}\\O&C^{-1}\end{bmatrix}\]

(3) 固有方程式\(Ax=\lambda x\)を成分ごとに書き下す。

\[ \begin{eqnarray} 4a+b+2&=&\lambda\\ 5a+b+5&=&2\lambda\\ 5a+0+3&=&\lambda a\\ 9a+2b+9&=&\lambda b\\ -a+b+5&=&5\lambda \end{eqnarray}\]

よく見ると1行目、2行目、5行目が\(a,b,\lambda\)に関する線形方程式になっていて3変数に3式あるのでこれは解ける。

\[ \begin{eqnarray} 4a+b-\lambda&=&-2\\ 5a+b-2\lambda&=&-5\\ -a+b-5\lambda&=&-5 \end{eqnarray}\]

\[ \Rightarrow\quad\begin{eqnarray} -a+b-5\lambda&=&-5\\ 2b-9\lambda&=&-10\\ \lambda&=&2 \end{eqnarray}\]

より\(a=-1,b=4,\lambda=2\)が答え。

(4) 任意の行列が正則行列\(P\)でジョルダン標準形\(J\)に相似変換できることを使う。つまり\(A=PJP^{-1}\)。これより

\[ I+\sum_{k=1}^\infty \frac{A^k}{k!}=P\left(\sum_{k=0}^\infty\frac{J^k}{k!}\right)P^{-1}\]

と書ける。ここで\(A^0=I\)とした。\(A\)の固有値を\(\lambda_1,\lambda_2,\dots,\lambda_n\)とすると、ジョルダン標準形の対角成分は\(A_{ii}=\lambda_i\)となっていて左下部分は全てゼロなので、\(\sum_{k=0}^\infty J^k/k!\)の対角成分は

\[ \sum_{k=0}^\infty\frac{\lambda_i^k}{k!}=e^{\lambda_i}\gt 0\]

である。左下部分が全てゼロであることを考慮すると、\(\sum_{k=0}^\infty J^k/k!\)の行列式は

\[ \left|\sum_{k=0}^\infty\frac{J^k}{k!}\right|=\prod_{i=0}^ne^{\lambda_i}=\exp\left(\sum_{i=0}^n\lambda_i\right)\gt 0\]

である。よって、もともとの行列の行列式は

\[ \left|I+\sum_{k=0}^\infty \frac{A^k}{k!}\right|=|P|\left|\sum_{k=0}^\infty\frac{J^k}{k!}\right||P^{-1}|=|P||P|^{-1}\exp\left(\sum_{i=0}^n\lambda_i\right)\\ =\exp\left(\sum_{i=0}^n\lambda_i\right)\gt 0\]

となって常に正。よって正則。

(5-1) \(w_1\)を正規化して\(x\)と内積を取ればいい。\(w_1'=w_1/\|w_1\|\)とすると、求めるベクトルは\(w_1'^Txw_1'\)

\[ w_1'=\begin{bmatrix}1/\sqrt{2}\\1/\sqrt{2}\\0\\0\end{bmatrix},\ w_1'^Txw_1'=\frac2{\sqrt{2}} \begin{bmatrix}1/\sqrt{2}\\1/\sqrt{2}\\0\\0\end{bmatrix}= \begin{bmatrix}1\\1\\0\\0\end{bmatrix}\]

このベクトルと\(x\)の角度は\(\cos\theta=x^Ty/\|x\|\|y\|\)を使えばよく、計算すると\(\cos\theta=1/\sqrt{2}\)。よって\(\theta=\pi/4\)

(5-2) 射影行列は\(w_1'=w_1/\|w_1\|\)\(w_2'=w_2/\|w_2\|\)を使って\(P=w_1'w_1'^T+w_2'w_2'^T\)と書ける。これを計算すると、

\[ P=\begin{bmatrix}1&1/2&1/2&0\\1/2&1/2&0&0\\1/2&0&1/2&0\\0&0&0&0\end{bmatrix}\]

を得る。また、\(x\)を右から掛けると\(y=[2\ 1\ 1\ 0]^T\)を得る。

(5-3) ちまちま補空間の基底を出して\(P\)と同じようにやってもいいが、最も早い方法は、直交補空間への射影行列が\(Q=I-P\)で与えられるということを使うこと。計算すると、

\[ Q=I-P=\begin{bmatrix}0&-1/2&-1/2&0\\-1/2&1/2&0&0\\-1/2&0&1/2&0\\0&0&0&1\end{bmatrix}\]

を得る。また、\(x\)を右から掛けると\(y=[0\ 0\ 0\ 1]^T\)を得る。