tr(AB)=tr(BA)の証明

/ Math

行列の積のトレースはその積の順番を入れ替えても等しい。

正方行列の場合

\(A,B\)が両方\(n\times n\)正方行列のとき、

\[ \begin{align} (AB)_{ij}&=\sum_{k=1}^n A_{ik}B_{kj}\\ (BA)_{ij}&=\sum_{k=1}^n B_{ik}A_{kj} \end{align}\]

これより、

\[ \begin{align} \mathrm{tr}[AB]&=\sum_{i=1}^n(AB)_{ii}\\ &=\sum_{i=1}^n\sum_{k=1}^n A_{ik}B_{ki}\\ &=\sum_{k=1}^n\sum_{i=1}^n B_{ki}A_{ik}\\ &=\sum_{k=1}^n (AB)_{kk}\\ &=\mathrm{tr}[BA] \end{align}\]

以上から

\[ \mathrm{tr}[AB]=\mathrm{tr}[BA]\]

長方行列の場合

\(A\)\(n\times m\)\(B\)\(m\times n\)の長方行列のとき、

\[ \begin{align} (AB)_{ij}&=\sum_{k=1}^\textcolor{red}{m} A_{ik}B_{kj}\\ (BA)_{ij}&=\sum_{k=1}^n B_{ik}A_{kj} \end{align}\]

これより

\[ \begin{align} \mathrm{tr}[AB]&=\sum_{i=1}^n(AB)_{ii}\\ &=\sum_{i=1}^n\sum_{k=1}^\textcolor{red}{m} A_{ik}B_{ki}\\ &=\sum_{k=1}^\textcolor{red}{m}\sum_{i=1}^n B_{ki}A_{ik}\\ &=\sum_{k=1}^\textcolor{red}{m} (AB)_{kk}\\ &=\mathrm{tr}[BA] \end{align}\]

以上から

\[ \mathrm{tr}[AB]=\mathrm{tr}[BA]\]

赤で示した所以外は全く変わらない。

3つ以上の場合

まず正方行列の場合は3つ以上でもいくらでも入れ替え可能。

長方行列の場合は、行列サイズが巡回していれば成立して同じようにして示せる。

整数\(n_1,n_2,n_3,\dots,n_I\)を考える。

\(n_1\times n_2\)行列\(A_1\)

\(n_2\times n_3\)行列\(A_2\)

、、、

\(n_{I-1}\times n_I\)行列\(A_{I-1}\)

\(n_I\times \textcolor{red}{n_1}\)行列\(A_I\)

について

\[ \begin{align} &\mathrm{tr}[A_1\times A_2\times \dots\times A_I]\\ =&\mathrm{tr}[A_2\times A_3\times\dots\times A_I\times A_1]\\ =&\mathrm{tr}[A_3\times A_4\times\dots\times A_I\times A_1\times A_2]\\ &\qquad\vdots\\ =&\mathrm{tr}[A_I\times A_1\times\dots\times A_{I-2}\times A_{I-1}]\\ \end{align}\]

わかりやすいようにちょうど3つのときを書き下すと

\[ \mathrm{tr}[ABC]=\mathrm{tr}[BCA]=\mathrm{tr}[CAB]\]

証明はやること同じなため省略する。