とある数学の問題と解答のメモ221

/ Math Exercise

問題

(1) \(n\times n\)実行列\(A,B\)について以下を証明せよ。

  • \(A+B\)が正則ならば\(A(A+B)^{-1}B=B(A+B)^{-1}A\)
  • \(A,B\)が正則ならば\(A^{-1}+B^{-1}=A^{-1}(A+B)B^{-1}\)
  • \(A,B,A+B\)が正則ならば\((A^{-1}+B^{-1})^{-1}=A(A+B)^{-1}B\)

(2) 以下の\(n\times n\)行列\(A_n\)の逆行列を求めたい。

\[ A_n=\begin{bmatrix}2&-1&0& &0&0\\ -1&2&-1&\cdots &0&0\\ 0&-1&2& &0&0\\ &\vdots& &\ddots&&\vdots \\ 0&0&0& &2&-1\\ 0&0&0&\cdots&-1&1\end{bmatrix}\]

ただし、\(A_n\)の対角成分は\((n,n)\)成分のみ1で他は2である。

(2-1) \(A_2,A_3\)の逆行列を求めよ。

(2-2) \(A_n\)の逆行列を求めよ。また、求めたものが実際に\(A_n\)の逆行列となっていることを示せ。

(3) \(A=\begin{bmatrix}0&1\\1&0\end{bmatrix}\)について、以下の設問に答えよ。

(3-1) ある行列\(P\)、ある実数\(\lambda_1,\lambda_2\)ただし(\(\lambda_1\ge\lambda_2\))を用いて、\(A=P\begin{bmatrix}\lambda_1&0\\0&\lambda_2\end{bmatrix}P^{-1}\)とすることが出来る。\(P,\lambda_1,\lambda_2\)を求めよ。

(3-2) 実数\(t\)について、

\[ \exp(tA)=\lim_{n\to\infty}\left(I+\frac{t}nA\right)^n\]

で定義される\(\exp(tA)\)を設問(3-1)の結果を使って求めよ。

解答

(1) まず1つめ、足して引く

\[ A(A+B)^{-1}B=(A+B-B)(A+B)^{-1}B\\ =(A+B)(A+B)^{-1}B-B(A+B)^{-1}B\\ =B-B(A+B)^{-1}B\\ =B(A+B)^{-1}(A+B)-B(A+B)^{-1}B\\ =B(A+B)^{-1}(A+B-B)=B(A+B)^{-1}A\]

次に2つめ、くくるだけ

\[ A^{-1}+B^{-1}=A^{-1}(I+AB^{-1})\\ =A^{-1}(B+A)B^{-1}=A^{-1}(A+B)B^{-1}\]

最後、中でくくって逆行列。

\[ A(A+B)^{-1}B=A(B(B^{-1}A+I))^{-1}B\\ =A(B(B^{-1}+A^{-1})A)^{-1}B\\ =AA^{-1}(B^{-1}+A^{-1})^{-1}B^{-1}B\\ =(A^{-1}+B^{-1})^{-1}\]

(2-1) 2次の逆行列は簡単。対角要素入れ替えて非対角要素マイナス掛けて行列式でわるだけ。3次の逆行列はお好みの方法で。この場合のオススメは余因子行列出しまくる方法。結果は以下。

\[ A_2^{-1}=\begin{bmatrix}1&1\\1&2\end{bmatrix},\ A_3^{-1}=\begin{bmatrix}1&1&1\\1&2&2\\1&2&3\end{bmatrix}\]

(2-2) 前問が誘導だったので求める、というか予想するのは簡単。

\[ A_n^{-1}=\begin{bmatrix}1&1&1&\cdots&1\\ 1&2&2&\cdots&2\\ 1&2& 3& &\vdots\\ \vdots&\vdots & &\ddots&n-1\\ 1&2&\cdots&n-1&n\end{bmatrix}\]

になると予想される。示すには具体的に掛け算するなりすればよい、のだがこいつがなかなか面倒。今、確認のため上記\(A_n^{-1}\)をいったん\(B_n\)とおいて\(A_nB_n\)の各成分\((ab)_{ij}\)を求める。

\(i=j\)のとき、

\[ (ab)_{ii}=(-1)(i-1)+2\cdot i+(-1)i=-i+1+2i-i=1\]

次に、\(i\lt j\)のとき、

\[ (ab)_{ij}=(-1)(i-1)+2\cdot i+(-1)(i+1)=-i+1+2i-i-1=0\]

最後に\(i\gt j\)のとき(対称行列の積は対称行列よりゼロになるはずだが)、

\[ (ab)_{ij}=(-1)(i+1)+2(i+1)+(-1)(i+1)=\\(-1+2-1)(i+1)=0\]

より境界以外では確かに\(A_nB_n\)が単位行列になることが示せた。\((1,1)\)要素は2-1=1で常に1、また1行目の他の要素は2-2=0で常にゼロになる。対称行列より1列目も同じ。また\((n,n)\)要素については\(-(n-1)+n=1\)、また\(n\)行目の他の要素は上で既に示されている。非常にふわっとしているけど逆行列になっていることはこれで示された。

(3-1) 単に固有値を求めて対角化する問題。

\[ |\lambda I-A|=\left|\begin{matrix}\lambda&-1\\-1&\lambda\end{matrix}\right|= \lambda^2-1\\ =(\lambda-1)(\lambda+1)=0\]

より固有値は\(\lambda=\pm 1\)で条件より\(\lambda_1=1,\lambda_2=-1\)。また、固有ベクトルも至極簡単で\(\lambda_1=1\)に属するのが\([1\ 1]\)\(\lambda_2=-1\)に属するのが\([1\ -1]\)なのでこれらを順番に並べた\(P=\begin{bmatrix}1&1\\1&-1\end{bmatrix}\)が求める\(P\)

(3-2) 行列指数関数を求める問題。多分普段と若干定義が違うがよく見ると問題なくできる。\(P^{-1}AP=D\)とすると、

\[ \left(I+\frac{t}nA\right)^n=\left\{P\left(P^{-1}P+\frac{t}nP^{-1}AP\right)P^{-1}\right\}^n\\ =\left\{P\left(I+\frac{t}nD\right)P^{-1}\right\}^n\\ =P\left(I+\frac{t}nD\right)P^{-1}P\left(I+\frac{t}nD\right)P^{-1}P\cdots\\ \cdots P^{-1}P\left(I+\frac{t}nD\right)P^{-1}\\ =P\left(I+\frac{t}nD\right)^nP^{-1}\]

ここで、\(P\)に挟まれた行列は対角行列なので\(n\)乗は単に対角要素の\(n\)乗で求められる。

\[ \lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{\lambda_1t}n\right)^n =\lim_{n\to\infty}\left\{\left(1+\frac{\lambda_1t}n\right)^{n/\lambda_1t}\right\}^{\lambda_1t} =e^{\lambda_1t}\]

が(1,1)要素で(2,2)要素も同じように計算できるので、結局、

\[ \exp(tA)=P\begin{bmatrix}e^t&0\\0&e^{-t}\end{bmatrix}P^{-1}\\ =\begin{bmatrix}(e^t+e^{-t})/2&(e^t-e^{-t})/2\\ (e^t-e^{-t})/2&(e^t+e^{-t})/2\\\end{bmatrix}=\begin{bmatrix}\cosh t&\sinh t\\ \sinh t&\cosh t\end{bmatrix}\]

となる。