とある数学の問題と解答のメモ232

/ Math Exercise

問題

(1) 以下の設問に答えよ。

(1-1) 次の値を求めよ。

\[ \int_1^\infty\frac{dx}{(x^2+1)^2}\]

(1-2) 関数\(f(x)\)は任意の\(x\ge 1\)において微分可能であり、次式を満たすとする。

\[ \begin{align} f(1)&=1\\f'(x)&=\frac{2}{\sqrt{f(x)}+1}\left(\frac{1}{x^2+\{f(x)\}^2}\right)^2 \quad(x\ge 1) \end{align}\]

このとき\(\lim_{x\to\infty}f(x)\)が有限の値に収束することを示せ。

(1-3) 設問(1-2)で答えた関数\(f(x)\)に対して\(\lim_{x\to\infty}f(x)<5/4\)が成り立つことを示せ。

(2) 微分可能なスカラ関数\(g(x,y,z)\)に対して\(g(x,y,z)=0\)によって定義される3次元空間上の曲面を\(\mathbf{S}\)と記す。\(\mathbf{S}\)上の点\((a,b,c)\)に対して以下の直線を点\((a,b,c)\)における\(\mathbf{S}\)の法線という。

\[ \frac{x-a}{g_x(a,b,c)}=\frac{y-b}{g_y(a,b,c)}=\frac{z-c}{g_z(a,b,c)}\]

ただし\(g(x,y,z)\)\(x,y,z\)に関する偏導関数をそれぞれ\(g_x,g_y,g_z\)と表し\(g_x\neq 0, g_y\neq 0, g_z\neq 0\)とする。一方、点\((x,y,z)\)と点\((p,q,r)\)の距離の2乗を

\[ f(x,y,z)=(x-p)^2+(y-q)^2+(z-r)^2\]

とおく。次の設問に答えよ。

(2-1) 点\((a,b,c)\)が、\(\mathbf{S}\)上で点\((p,q,r)\)に最も距離が近い点であったとする。このとき、点\((p,q,r)\)は点\((a,b,c)\)における\(\mathbf{S}\)の法線上にあることを示せ。

(2-2) 次式によって定義される曲面を\(\mathbf{S}_1\)とおく。このとき、\(\mathbf{S}_1\)上の点\((a,b,c),\ ab\neq 0\)における\(\mathbf{S}_1\)の法線を求めよ。

\[ z=x^2+y^2\]

(2-3) 設問(2-2)の\(\mathbf{S}_1\)上に、点\((1,2\sqrt{2},0)\)から最も距離が近い点が唯一ある。それを求めよ。

解答

(1-1) \(x=\tan \theta\)と置換する。\(dx=d\theta/\cos^2\theta\)、さらに\(x:1\to\infty\)のとき\(\theta:\pi/4\to\pi/2\)である。

\[ \begin{align}\int_1^\infty\frac{dx}{(x^2+1)^2}&=\int_{\pi/4}^{\pi/2}\frac{1}{(\tan^2\theta+1)^2}\cdot\frac{d\theta}{\cos^2\theta}\\ &=\int_{\pi/4}^{\pi/2}\frac{1}{(1/\cos^2\theta)^2}\cdot\frac{d\theta}{\cos^2\theta}\\ &=\int_{\pi/4}^{\pi/2}\cos^2\theta d\theta\\ &=\int_{\pi/4}^{\pi/2}\frac{1+\cos 2\theta}{2}d\theta\\ &=\frac12\left[\theta+\frac12\sin 2\theta\right]_{\pi/4}^{\pi/2}\\ &=\frac12\left(\frac\pi{2}+0-\frac\pi{4}-\frac12\right)\\ &=\frac\pi{8}-\frac14 \end{align}\]

(1-2) まず\(f'(x)\)の符号について、2乗の中は当然常に正、さらにその前も\(\sqrt{f(x)}\)が正であること踏まえて正。よって\(f'(x)\ge 0\)がわかる。従って\(x\ge 1\)において\(f(x)\)は増加関数ということが示せる。

次に、\(f(1)=1\)でそこから\(x\)\(1\)より大きくすると増加していくわけだから\(x\ge 1\)において\(f(x)\ge 1\)がわかる。\(f(x)\ge 1\)を踏まえると

\[ \frac{2}{\sqrt{f(x)}+1}\left(\frac{1}{x^2+\{f(x)\}^2}\right)^2\le\frac{1}{(x^2+1)^2}\]

がわかる。\(f'(x)\)が最大になるのは分母が最小になるときで、分母を最小にするには\(f(x)=1\)を代入すればよい。以上より

\[ 0\le f'(x)\le \frac{1}{(x^2+1)^2}\]

\(x\to\infty\)において最右辺はゼロになるので挟み撃ちの原理により\(f'(x)\to 0, (x\to\infty)\)。よって\(f(x)\)は有限の値に収束する。

(1-3) 次の関係を使う。ちなみに微積分学の基本定理とかいうらしいが多分この名前を使っているひとはいないだろう。

\[ \int_a^bf'(x)dx=f(b)-f(a)\]

これに\(a=1,b\to\infty\)をいれて移項して計算をしていくと

\[ \begin{align} \lim_{x\to\infty}f(x)&=f(1)+\int_1^\infty f'(x)dx\\ &=1+\int_1^\infty f'(x)dx\\ &\le 1+\int_1^\infty\frac{dx}{(x^2+1)^2}\\ &=1+\frac\pi{8}-\frac14\\ &=\frac\pi{8}+\frac34=\frac{\pi+6}8\le\frac{10}{8}=\frac54 \end{align}\]

より示せた。ちなみに当たり前だが最後は\(\pi\le 4\)を使っている。この問題において\(5/4\)\(\pi\)を整数でおさえられる下限だったわけだ。

(2-1) ラグランジュの未定乗数法をつかう。問題としては点\((p,q,r)\)が与えられていて、条件\(g(x,y,z)=0\)のもとで\(f(x,y,z)\)を最小にするような点を求めよ、というものになる。この問題のラグランジュ関数は

\[ L(x,y,z,\lambda)=f(x,y,z)-\lambda g(x,y,z)\]

これを\(x,y,z,\lambda\)でそれぞれ微分してゼロとおく。\(\lambda\)の微分に関する式は条件そのものであるのでいったん他のものを計算すると

\[ f_x(x,y,z)-\lambda g_x(x,y,z)=2(x-p)-\lambda g_x(x,y,z)=0\\ f_y(x,y,z)-\lambda g_y(x,y,z)=2(y-q)-\lambda g_y(x,y,z)=0\\ f_z(x,y,z)-\lambda g_z(x,y,z)=2(z-r)-\lambda g_z(x,y,z)=0\]

ここから\(\lambda\)を消去するために、まずそれぞれを\(\lambda\)について解き、それらを等号でつなぐ。

\[ \frac{\lambda}2=\frac{x-p}{g_x(x,y,z)}=\frac{y-q}{g_y(x,y,z)}=\frac{z-r}{g_z(x,y,z)}\]

これを満たすような\((x,y,z)\)が条件を満たして(曲面上にあって)かつ点\((p,q,r)\)からの距離を最小にする点である。ところがいまそのような点は\((a,b,c)\)であるとしていた。

\[ \frac{p-a}{g_x(a,b,c)}=\frac{q-b}{g_y(a,b,c)}=\frac{r-c}{g_z(a,b,c)}\]

もともとのこの問題における法線の定義式と見比べよ。これより点\((p,q,r)\)は確かに法線上の点である。

(2-2) これは\(g(x,y,z)=z-x^2-y^2\)として定義に代入するだけである。

\[ \frac{x-a}{-2a}=\frac{y-b}{-2b}=z-c\]

条件は\(ab\neq 0\)なので、つまり\(a\neq 0\)かつ\(b\neq 0\)なので分母がアレになる心配はない。条件が若干回りくどい。

(2-3) これも(2-1)を具体的にやるだけだ。簡単すぎやしないだろうか。今、前問で法線の式は得られているので\(x=1,y=2\sqrt{2},z=0\)を代入して\(a,b,c\)について解けばよい。

\[ \frac{1-a}{2a}=\frac{2\sqrt{2}-b}{2b}=c\]

のだが、よく考えればわかるのだがこれだと式が足らなくて\(c=a^2+b^2\)も使う。\((a,b,c)\)は曲面上にあるので。

\[ \begin{align} c&=a^2+b^2\\ c&=\left(\frac1{2c+1}\right)^2+\left(\frac{2\sqrt 2}{2c+1}\right)^2\\ (2c+1)^2c&=1+8\\ 4c^3+4c^2+c-9&=0\\ (c-1)(4c^2+8c+9)&=0 \end{align}\]

これでほとんど終わり。分母を払ったせいで他の\(c\)も出てきそうだが既に\(c=1\ge 0\)が見つかったのでこれが答えだろう。確認してもよいが、設問はただ1つといっているので残りの\(c\)は多分負の値のはず。解の公式つかってざっと正負だけ見積もってやるとやはり負なのでこれ以上の計算は必要ない。

よって答えは\(a=1/(2c+1)=1/3, b=2\sqrt{2}/(2c+1)=2\sqrt{2}/3,c=1\)