問題
(1-1) \(x\)を実数として、次の行列のランクを求めよ。
\[ \begin{pmatrix}1&x&x\\x&1&x\\x&x&1\end{pmatrix}\]
(1-2) 整数行列\(A\)(全ての要素が整数であるような行列)について、\(A^{-1}\)も整数行列になるなら\(A\)の行列式は\(1\),\(-1\)のいずれかになることを証明せよ。
(1-3) \(A^T=-A\)を満たす実行列\(A\)について、この行列の固有値\(\lambda\)とそれに関する固有ベクトル\(x\)に対して\(A^Tx=\overline{\lambda}x\)の関係が知られている。これを用いて、行列\(A\)の固有値は純虚数になることを示せ。
(2) 3次元ベクトル空間の部分空間\(V\)と\(W\)が次のように与えられている。ただし\(x=(x_1,x_2,x_3)^T\in\mathbb{R}^3\)
\[ V=\{x\in\mathbb{R}^3 | x_1+2x_2+x_3=0,\ x_1+x_2=0\}\\ W=\{x\in\mathbb{R}^3 | -x_1+x_2+2x_3=0\}\]
(2-1) \(\dim(V)\)を求めよ。
(2-2) \(\dim(V\cap W)\)を求めよ。
(2-3) \(\dim(V+W)\)を求めよ
(2-4) \(W\)の直行補空間\(U\)の基底を求めよ。
(2-5) \(W\cup U\)が\(\mathbb{R}^3\)の部分空間であるか否かを示せ。
解答
(1-1)
普通に行基本変形していく。
\[ \rightarrow \begin{pmatrix}1&x&x\\0&(1+x)(1-x)&x(1-x)\\ 0&x(1-x)&(1+x)(1-x)\end{pmatrix}\\ \rightarrow \begin{pmatrix}1&x&x\\0&(1+x)(1-x)&x(1-x)\\ 0&0&(1-x)(1+2x)\end{pmatrix}\]
これより、\(x=1\)の時ランク1、\(x=-1,-1/2\)の時ランク2、それ以外の時ランク3だとわかる。
(1-2)
\(A\)の全ての要素が整数ならばその要素の積と和だけで求められる行列式\(|A|\)も整数である。同様の理由により\(|A^{-1}|\)も整数である。ここで逆行列の定義より\(AA^{-1}=I\)となるので両辺の行列式を取ると行列式の性質から\(|A||A^{-1}|=1\)が言える。\(|A|,|A^{-1}|\)がいずれも整数でこれを満たすためには両方\(-1\)か両方\(1\)の組み合わせしかありえない。
(1-3)
\(\lambda,x\)がそれぞれ\(A\)の固有値固有ベクトルのとき\(Ax=\lambda x\)、より直ちに\(-Ax=-\lambda x\)。ここで左辺は\(A^T=-A\)なので\(A^Tx\)に等しい。従って、問いで示された関係を使うと\(A^Tx=\overline{\lambda}x=-\lambda x\)。暗黙的に\(x\neq 0\)であるので\(\lambda=-\overline{\lambda}\)。これは\(\lambda\)が純虚数であることを意味する。
(2-1)
条件式が同値でなければ\(\dim(V)=1\)となるはずである。実際、
\[ \begin{pmatrix}1&2&1\\1&1&0\end{pmatrix}\rightarrow \begin{pmatrix}1&2&1\\0&-1&-1\end{pmatrix}\]
よりランク落ちはしておらず、\(\dim(V)=1\)。なお、\(V\)の基底は\(x_3=c\)と置いて連立方程式を解くことで\((1, -1, 1)^Tc\)。
(2-2)
\(W\)の条件式が同値でなければ\(\dim(V\cap W)=0\)となるはずである。ところが、
\[ \begin{pmatrix}1&2&1\\1&1&0\\-1&1&2\end{pmatrix}\rightarrow \begin{pmatrix}1&2&1\\0&-1&-1\\0&3&3\end{pmatrix}\\ \rightarrow \begin{pmatrix}1&2&1\\0&1&1\\0&0&0\end{pmatrix}\]
よりランク落ちしており\(\dim(V\cap W)=1\)で基底は\(V\)のものと同じである。
(2-3)
前問より\(V\)と\(W\)は重なっている。従って\(\dim(V+W)=\dim(W)=2\)。
(2-4)
まず\(W\)の基底を求める。\(x_3=c_1,x_2=c_2\)とおいて\(-x_1+x_2+2x_3=0\)を解くと、
\[ \begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix}= \begin{pmatrix}2\\0\\1\end{pmatrix}c_1 +\begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix}c_2\]
より基底は\((2,0,1)^T\)と\((1,1,0)^T\)。直行補空間の基底はこれら両方と直交するので次の連立方程式を解けばよい。
\[ \begin{pmatrix}2&0&1\\1&1&0\end{pmatrix}x=0\]
結果は\(x=(1,-1,-2)^Tc\),(\(c\)任意定数)なので基底は\((1,-1,-2)^T\)。
(2-5)
部分空間ではない。一般的に部分空間\(V\)では任意の点\(x,y\in V\)が\((x+y)\in V\)を満たしていなければならない。ところが、今任意に\(w\in W\subset W\cup U\)、\(u\in U\subset W\cup U\)を取ってくると\((w+u)\notin W\cup U\)。したがって\(W\cup U\)は\(\mathbb{R}^3\)のベクトル空間の部分空間ではない。